2026年8月26日時点で、DeepSeek公式APIの現行候補は deepseek-v4-flash、deepseek-v4-pro、実験的な deepseek-v4-flash-vision-exp の3つです。R1とV3の比較だけでは、新規APIで指定すべきモデルを決められなくなりました。
最初の判断は能力ランキングではなく入力契約です。テキストと通常のAgentならV4 Flash、難しいコードや長いツール実行で差を検証したいならV4 Pro、スクリーンショットや図表が必須ならVision Expを候補にします。Vision Expは新しいから選ぶのではなく、画像が必要で実験性を許容できるときだけ選びます。
DeepSeekのWeb/アプリ、公式API、オープンウェイト、第三者サービスの同名モデルは別の利用面です。ある画面で使えることは、APIの権利、料金、SLA、同一バージョンを保証しません。
現行3モデルを用途から整理する
公式APIクイックスタートでは、2つのテキストIDが現在 V4-Flash-0731 と V4-Pro-0813 を指します。Vision Expは2026年8月21日にAPIへ追加された実験モデルです。
| APIモデルID | 最初に試す処理 | 選定時の注意 |
|---|---|---|
deepseek-v4-flash | 会話、抽出、変換、JSON、日常的なコーディング、コスト重視のAgent | 高難度の知識や長いAgent処理ではProとの差を確認する |
deepseek-v4-pro | 複雑なコード変更、高い失敗コスト、多段ツール、難しい専門処理 | 同じ時間帯・キャッシュ状態ではトークン料金がFlashの約3倍 |
deepseek-v4-flash-vision-exp | スクリーンショット、チャート、スキャン、画面状態を扱うAgent | 実験モデルとして検証、監視、フォールバックが必要 |
DeepSeekの更新履歴によると、V4 Proは8月13日に正式版となり、アプリ、Web、APIへ展開されました。一方でVision ExpはAPI上の実験モデルです。「正式版」「実験モデル」という状態は、性能表より先に運用判断へ入れる必要があります。
1MコンテキストではProとFlashを区別できない
モデル・料金ページは3モデルすべてに 100万トークンのコンテキストと最大38.4万トークンの出力を記載しています。JSON、Tool Calls、Responses API、Anthropic互換APIも共通です。FIMはテキスト2モデルのnon-thinking時のみで、Vision Expは非対応です。
そのため、長文脈が必要という理由だけでProは選べません。代表ワークロードでは、必要な根拠を長い入力から回収できるか、後半でも指示を守るか、ツール状態を維持するか、出力を必要な長さに抑えるかを確認します。
セルフホストも別評価です。DeepSeekの公式V4リポジトリは、Proを総パラメータ1.6T/活性49B、Flashを284B/活性13BのMoEとして公開し、MITライセンスを示しています。これは導入可能性を示しますが、量子化、GPU構成、推論サーバーごとの速度や品質を保証するものではありません。
料金はモデル名だけで決まらない
公式APIは平日にピーク料金を設定しています。ピークは 01:00–04:00と06:00–10:00 UTC、それ以外は半額のオフピークです。日本時間では平日 10:00–13:00と15:00–19:00 がピークに相当します。
2026年8月26日に確認した、100万トークン当たりの米ドル料金は次の通りです。
| モデル | 時間帯 | 入力・キャッシュヒット | 入力・キャッシュミス | 出力 |
|---|---|---|---|---|
| Flash / Vision Exp | オフピーク | $0.007 | $0.22 | $0.66 |
| Flash / Vision Exp | ピーク | $0.014 | $0.44 | $1.32 |
| Pro | オフピーク | $0.022 | $0.66 | $1.98 |
| Pro | ピーク | $0.044 | $1.32 | $3.96 |
最安のキャッシュヒット料金だけを引用しても、実際の費用にはなりません。30万トークンのキャッシュミス入力と3万トークンの出力をオフピークで処理すると、Flashは約$0.0858、Proは約$0.2574です。ただし、Proが再試行や人手修正を減らすなら、合格結果1件当たりの費用は逆転する可能性があります。
モデルと推論強度は別々に比較する
V4 FlashとV4 Proはthinkingを無効化でき、有効時は low、high、max を選べます。思考モードの公式仕様ではデフォルトが有効・highです。互換入力のmediumとxhighは現在highへ対応します。
評価は2段階に分けます。まずFlashで合格基準を満たす最低の推論強度を探し、次に同じ強度でProを比較します。Flash-lowとPro-maxを比べても、差がモデルか推論予算かを説明できません。
thinking時は temperature、top_p、presence_penalty、frequency_penalty が無視されます。さらにtoolsを含む複数ターンでは、ツールを呼ばなかったターンも含め、公式形式でreasoning_contentを次のリクエストへ戻す必要があります。欠落すると400になるため、モデル品質より先にクライアント実装を確認します。
Vision Expを本番候補にする条件
VisionガイドはJPEG、PNG、GIF、WebPを受け付け、base64、外部URL、Files APIの3経路を案内しています。通常のFlashとProへ画像を送ると400になります。
Vision Expは、画面エラーの特定、図表の読解、スキャンからの抽出、視覚状態を使うAgentで有力です。ただし実験モデルなので、重要な結果はスキーマや業務ルールで確認し、観測バージョンを評価記録へ残し、画像が任意ならテキスト経路へ戻せる設計にします。
画像は入力トークンへ換算され、現行の前処理では1画像当たり最大384トークンです。別にファイルサイズ、リクエスト本体、画像数、寸法の制限があるため、小さい文字や密な表、多画像の順序は自社サンプルで確認します。
R1とV3.2は移行文脈で扱う

R1はDeepSeekの推論系譜、V3.2は研究やオープンウェイト環境で現在も意味があります。しかしV4 API公開時、DeepSeekはdeepseek-chatとdeepseek-reasonerを廃止予定にし、一時的にV4 Flashのnon-thinking/thinkingへ対応させました。
新規コードは現行IDを明示する方が安全です。移行時はmodel文字列だけでなく、provider、base URL、実効バージョン、利用フィールド、代表タスクの出力を記録します。第三者ゲートウェイの旧aliasが公式APIと同じスナップショットを指すとは限りません。
代表タスクでルーティングを決める

通常6件、難問4件、ツール障害2件、長文脈または画像境界2件程度を用意し、同じprompt、tools、推論強度、合格基準で比較します。初回合格、最終合格、入力/推論/出力トークン、キャッシュ、遅延、再試行、人手修正、合格1件当たり費用を残します。
Flashが重要ケースを満たすならFlashで止めます。Proが一部の難問だけ改善するなら、そのクラスだけProへ振り分けます。画像が不要なら実験モデルを依存関係へ追加しません。Proをさらに詳しく検討する場合は、DeepSeek V4 Pro APIガイドで接続とトレードオフを確認できます。
選ぶべきモデルは永続的な1位ではなく、実際の合格基準を繰り返し満たす最小コストの構成です。追加料金と実験リスクは、観測できる改善がある処理にだけ割り当てます。



